Episode 02全国への起点
東京駅の発展を
一日も止めることなく
下支えする。

Prologue

一日46万人が乗降する現役の文化遺産で、
安全や利便の向上、高機能化を進める数々の工事。

東海道・東北新幹線をはじめ主要幹線・地下鉄など1日に約4,000本の列車が乗り入れ、全国とつながる鉄道網の起点、東京駅。1914年に開業し、震災や戦争の惨禍を超えてなお現役ではたらき続ける文化遺産だ。当時の姿を守りながらも、路線・利用者数を増やし、ひとつのまちとして発展してきたその歴史のかたわらを、野口工務店はずっと一緒に歩んできた。

プロジェクトチーム

プロジェクトチームプロジェクトチーム

東京駅の仕事は、
野口工務店の使命だ。

1954年
地下鉄丸ノ内線新設
1962年
東海道新幹線 駅構内高架橋架設
1972年
東北新幹線 乗降場新設

中央線重層化、京葉線の延伸、地下空間拡張…

野口工務店は、これらの大プロジェクトに土木の分野から携わってきた。それだけに東京駅は、野口工務店にとっても思い入れの強い、歴史ある仕事場だといえる。腕の立つ先人たちが担ってきたこの現場を引き継いだ時、喜びと誇りに震えたと現場代理人 鈴木慎吾は語る。

鉄道は1日たりとも休まない。毎日46万人以上が乗車するそのすぐ隣で、あるいは利用客のいない時間に、完璧な安全を確保した上で工事を進行しなければならない。
また、百年以上も前に造られた東京駅舎は重要文化財でもあり、工事には常に構造上の難しさがつきまとう。
日本初の試みにせよ、建物や利用者へのこまやかな配慮にせよ、極めて難度の高い数々の工事を、野口工務店は元請けである大林組と一丸となって支え続けてきたのだ。

使える時間は、終電から始発まで。
限られた時間と空間を
どう攻略するか。

鈴木が東京駅の現場に着任したのは2014年。15年間キャリアを積んだ新宿駅からの異動で、京浜東北線と山手線のホームにホームドアを設置するための改修工事を担当することになった。「東京駅は古い盛土式ホームで、補強するだけでは設備を取り付けられなかった。桁式ホームへの改造には時間を要する上、古くて図面が残っていなかったり掘ってから埋設物を発見したりと、なかなか思うように進まなかったのが最初です。結果、まずはホームの先端(黄色い線の外側)だけを改修する方法が採られました」

ホームに関わる工事の場合、作業がスタートするのは、終電の乗客がいなくなった後だ。翌朝始発が走り出すまでには何事もなかったように終わらせなければならない。営業時間の長い路線の場合、機材を運び入れてAM1:30ごろから作業をはじめ、AM3:00には片付けなければ間に合わない。作業に使える時間は、実質たった1時間半。この時間をいかに効率的に使うかが勝負だ。時間内に予定作業を100%完了させられるかどうかは、事前の段取り・準備に左右される。
また、ホームには障害物が多く、大きな重機を動かせるスペースはとれない。手作業に頼らざるを得ない部分も大きく、十分な作業員を確保する調整力もまた施工管理者の手腕のうちだ。

限られた“時間”と“空間”をどう攻略するか、施工管理者にはその緻密な戦略立てが求められているのである。

時間と空間の攻略たとえば、真夏、
狭小現場の
コンクリート打設。

生コンクリートが使える時間は、90分。

夏場は、冬場に比べてコンクリート材料が固まりやすい。
冬場の120分制限に対して、夏場は90分。
材料の納品から打設までをいかに速やかに行うかが作業計画の前提だ。

生コンクリートが使える時間は、90分。
コンクリートポンプ車は使えない。
どう搬送するか。どう打設するか。

作業スペースやルートがとれない現場では、生コンクリートをパイプで圧送し、
型枠内に直接流し込むコンクリートポンプ車が使えない。
では、材料をどのような方法で現場に届け、どうやって打設するか。
機械が使えなくなった途端、通常は課題にならないことが課題になる。
解決策として選ばれたのは、ホッパー(ロート状の容器)に生コンを入れ、
フォークリフトでピストン輸送する方法だった。
容れ物となったホッパーをクレーンで吊り上げ、
技術者のコントロールで型枠に流し込んでいく。

コンクリートポンプ車は使えない。どう搬送するか。どう打設するか。
ピストン輸送のペースとルート。

コンクリートの制限時間と打設のペースを考え合わせて、
生コンクリートの納品回数(ペース)や1回量が決められていく。
8m3の打設なら、2m3・4m3・2m3を30分間隔で…というような計画だ。
現場では、ホッパーのサイズや往復に必要な回数から、
搬送用に2ルートが確保された。

ピストン輸送のペースとルート。
ピストン輸送のペースとルート。
工事の制限時間。

現場を工事に使える時間を考えると、チャンスは1度きり。
もしコンクリートが硬化し始めても、新たに次の材料を運び込む余裕がない。
納品時刻や、現場一時保管の限界量など細かい調整が行われる。
作業員一人ひとりに、作業手順や内容が落とし込まれてはじめて工事が進んでいく。

工事の制限時間。
できない理由などいくらでもある。
出すべき答えは、やるためにどうするかだ。

「どうすればできるか」を模索して知恵を出し合う。
それが、野口工務店施工管理チームだ。
先輩から受け継いだ経験、自ら学び取ったノウハウ、
技術を持つネットワーク、機材・道具の手配、
それらすべてが揃わなければ、現場は前に進まない。

できない理由などいくらでもある。出すべき答えは、やるためにどうするかだ。

人の流れが変わる。
東京駅南部東西自由通路。

いま鈴木が管理しているのは、歩行者の回遊性を高める「南部東西自由通路」の施工現場。東京駅の南側で八重洲口と丸の内口をつなぐ、延長約290m・幅員8mの地下通路の整備工事だ。東京駅丸の内南口付近から八重洲南口付近まで改札外を5分以内で行ける新しい道は、今まで以上に人と地域の交流・連携を生み出すはずだ。

この工事は、昼夜を通して行われている。その第一歩は、既存の構造物によって制限されたスペースに車両や資材のルートを確保し、地下を掘り下げて、重機の入れる空間を造ることから始まった。大きな重機は使えないが、数々の工夫とチーム力を武器に、一歩一歩工事が進んでいく。多くの利用客が行き交うすぐ下で、今まさに新しい地下空間が創られている。東京駅の地図に、自分たちの手で、新しい道が描き出されていく。

東京駅の仕事は、野口工務店の使命だ。

撮影協力:JR東日本

Fin

Profile

施工管理

鈴木 慎吾Shingo SUZUKI

1999年入社。高校の恩師から、OBが入社していた野口工務店を紹介されたことが入社のきっかけとなった。入社して24年。今感じるのは「会社を規模で選んで作業に終始するより、野口工務店で、大きなプロジェクトに責任のある立場で携わるほうがずっとやりがいがある」ということ。「この会社で経験を重ねたら、大手にも負けない」と自信を見せる。

施工管理 鈴木 慎吾